健康情報
毎日なんとなく飲んでいる人は要注意!
「お酒」との距離感を考えよう
暑さと解放感でお酒を飲む機会が増える季節です。一方でアルコールがもたらす健康への害については研究が進み、飲みすぎた場合は肝臓だけでなく全身の病気と関連があることがわかってきました。“なんとなく”はやがて習慣となり、病気につながるリスクがあります。お酒とは、適度な距離感を保つようにしましょう。
「強い=病気にならない」ではない
お酒が飲めてしまうから体を壊す
お酒(アルコール)は胃と小腸から吸収され、肝臓で「アセトアルデヒド」に分解されます。アセトアルデヒドはさらに肝臓で「酢酸」に分解されますが、この分解能力は遺伝子によって異なり、分解できる人、少し分解できる人、まったく分解できない人に分かれます。
アセトアルデヒドには毒性があるため、これが長時間体内にとどまることで顔が赤くなったり、二日酔いの原因となります。つまり、アセトアルデヒドを分解できるかどうかがお酒を飲めるかどうかを左右することになります。
しかし、アセトアルデヒドを分解できても、酔いにくいだけで肝臓には負担がかかっています。また、飲酒量が多くなることで依存のリスクもあります。お酒を飲める人のほうが、結果として病気や依存のリスクが高いことに注意しておきましょう。
健診結果はどうでしたか? 注意したい肝臓の数値
【AST/GOT】
31(51)U/L以上
肝臓や心臓、筋肉の細胞が破壊されると数値が上がります。ALT/GPTと一緒に検査することによって、問題がある部位を特定します。
【ALT/GPT】
31(51)U/L以上
肝臓の細胞が破壊されると数値が上がります。AST/GOTと一緒に検査することによって、問題がある部位を特定します。
【γ-GT/γ-GTP】
51(101)U/L以上
肝臓の細胞が破壊されたり、胆汁の流れが悪くなったりすると数値が上がります。アルコールの影響を受けやすい検査項目です。
※( )内の数値は受診勧奨判定値です。この数値を上回ったら、医療機関を受診しましょう。
飲むなとは言いませんが
「お酒=健康によくない」という認識を忘れずに
1日当たりの純アルコール量が男性40g/女性20g以上になると、生活習慣病のリスクが上がるとされています(純アルコール量20gは500mLの缶ビール1本相当)。しかし、これは「ここまで飲んでいい」という許容量ではなく、高血圧や男性の食道がん、女性の出血性脳卒中など、少量の飲酒でもリスクが上がるとされている病気もあります。
健康への影響を理解したうえで、お酒との距離感を考え、飲酒量が増えないように注意しましょう。「飲みすぎた」と思ったら以後数日はお酒を控え、飲酒量を調整する工夫が必要です。
-
休肝日をつくる
健康のためには飲酒量を減らすことが重要です。1週間のうち、まったくお酒を飲まない日(休肝日)をつくれば、その分飲酒量は減ることになります。
休肝日は、依存症予防のためにも大切です。週に何日かは休肝日をつくり、肝臓を休ませるとともに飲酒が習慣になるのを防ぎましょう。なお、うっかり飲んでしまわないように、休肝日はお酒を目につかないところにしまっておくのがおすすめです。 -
大切に飲む
お酒が健康によくないものである以上、体を壊さず飲むことのできる人生の総量は決まっていると考えるほうが自然です。
そう考えると、二日酔いするような飲み方や、ネガティブな気持ちで飲むお酒はもったいないと思いませんか? おいしいお酒を長く楽しめるように、適切な距離を保ちましょう。
お酒は水分補給になりません
スポーツやサウナで大量に汗をかいた後、ビールを飲む人がいますが、危険なのでやめましょう。お酒は利尿作用があるため、水分補給にはなりません(例えばビールは利尿作用が強く、1リットルのビールを飲むことで1.1リットルの水分を失うとされています)。暑い時期は水分補給が重要ですが、お酒を飲んでしまうと逆に脱水症状を招くことを覚えておきましょう。
また、アセトアルデヒドの分解にも水分が必要なため、お酒が残りやすくなることも注意点です。まずは水で水分補給をして、その後お酒を楽しむようにしましょう。お酒と同じ量、チェイサー(水)を飲めばなお安心です。
炎天下でのバーベキューなども熱中症につながることがあります。こまめな水分補給でお楽しみください。
監修:久里浜医療センター医師 瀧村 剛